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temperance01

あらすじ

チェイサー・クレアはプロンテラの繁華街で一風変わった宿を兼ねた酒場を営んでいた。表向きは男色を好む者達がよく利用する胡散臭い酒場。しかし、裏では聖職者を専門に扱う売春組織と繋がっており、その定宿として利用されていた。
ある日、彼のお気に入りの用心棒兼男娼のアサシンクロスの青年が攫われた挙げ句、奴隷市流されるという事件が起きる。
情報は掴んでいたものの、大事には至らないだろうとアサシンクロスが何者かに脅されているのを静観していたが、最終的には市に流された上に、更には他所の商品が流れても買い手が付かないという暗黙の了解を裏切り買い手が付いてしまう。
彼のアサシンクロスを買い取ったのは、クレアの介入出来ないモロクの無法組織のボス・チェイサーだった。

 

※そんな感じの前置きを挟みつつ…と言うか、ROMお買い上げのお客様には、家畜調教する鬼畜葱のおじさんと言えば分かるキャラが攻めの葱×葱でございます。
上のあらすじを読めば、ご存じない方でもそれなりに楽しめると思います。
ではでは…本編どぞー?

 

 

砂漠特有の乾き熱を孕んだ風が頬を撫でる。
特に一度壊滅状態となったモロクの街を通る時は埃っぽさの中に焦げ臭い様な匂いも混じっていた。幾年前かは正確に思い出す気にもなれず、ぼんやりと町並みを毒花を想わせる紫紺の長い前髪で片目を隠したチェイサーが眺めていると、背後からペコペコを引いた若草色の髪のナイトが声を掛ける。

「クレア、どうかなさいましたか? 思い出を懐かしんでセンチメンタルにでもなりました?」

顔こそ童顔だが、身長も表情も大人びて、クレアと呼んだチェイサーに戯けた様子でクスクス笑いながら横顔を覗き込む。
視界に入ったナイトの顔、年の差を感じさせるがほぼ同じ高さの緑玉を見返して、微かに自嘲混じりの笑みを浮かべて緩く首を振り。

「いや、流石に転生前の事はもう朧気だヨ。上手く行くのかなぁって……」

独り言の様にぼそりと呟き、朽ちかけているが辛うじて現存する北門に向かいクレアは歩み始めた。
少年と青年の境界の曖昧さを持つ青年は、自分も付き添いこれから巻き込まれる筈なのに、他人事の様に愉しげに笑い自分もペコペコを引いて彼を追って歩き始める。

「貴方が上手くいかないと思うなら、上手くいかないのではないですか? 僕が力尽くで奪わねばなりませんが、それは問題が多すぎるでしょうね」

呆れた様に溜め息をつき、防塵用のマントのフードを目深に被り、砂埃を避けるように口元を隠すようにマントの襟を引き上げる。そして、荷物の中から一枚の地図を取り出し、クレアは北門を潜りモロクの街を後に目的地へと歩み始めた。

「……ここ、でしょうね……」

コネクションを駆使し交渉を重ね漸く入手した地図の通りに進むと、モロクの街を出て程なく、通常の地図では何も無い筈の場所にオアシスと供に拓けた私有地らしき柵と崖で囲まれた土地の入り口に辿り着く。
砂漠地帯故に緑豊かという訳ではないが、この地域の他の場所に比べれば緑は多く。奥手には砂漠地帯向きの果樹の立ち並ぶ果樹園まであり、それなりの規模を思わせた。

「ほほう、ここが例の人畜牧場なのですか……そうは見えない麗らかさ……と言う訳では流石にないですね」

近くに人の気配は無かったが、見張りでも居たようで如何にも柄の悪い冒険者らしき姿の男達が何人か剣呑な空気を纏わせて、二人の前に立ちはだかるようにぞろぞろと現れる。

「多勢に無勢……と言う訳ではありませんが、少々手こずりそうですね」

微笑んでいれば、それだけで場を和ませるような容の青年だったが、その表情に背筋が凍り付きそうなほどの残酷な笑みを浮かばせながら、引いていたペコペコの背に乗り愛用の槍を構え臨戦態勢に入ろうとする。

「……先程、アデル、キミの出番があっては問題があると自分で言ったじゃないか……全く……」

戦いの火蓋が切って落とされそうに火花散る最中に、物怖じすることなくクレアはすっと立ち防塵マントのフードを降ろし顔の半分を覆っていた襟を引き下ろして、艶然と微笑みながら手にしていた地図を相手に見せる。
すると、一瞬男か女か惑うような優美さに戦意を削がれた男の一人が、落胆したような声で言う。

「何だ、客か……今日のショーは夜からだぞ。胡散臭いから、何事かと思った……」

他の連中も、敵対する組織やらではないのが分かるとそれぞれ反応は違うが、戦意はなくした様子で構えた武器やらを降ろして、営業時間外の珍客を物珍しそうに眺めたり、詰まらなそうに母屋に帰ろうとしたりし始める。
この場が納まって面倒ごとにならなかった事には安堵したが、そのまま客と間違われて用件を済ませられないのは困ると、先頭に居たこの集団のリーダー格らしきブラックスミスの男に営業スマイルとも言える笑みを浮かべ話しかける。

「客、という訳でも無いのですヨ。アナタ達のマスター…リチャード・ロウ様にお目通りしたくプロンテラから参りました」

クレアがそう言うと、再び剣呑な空気が戻りかける。が、それを無視して男に一枚の名刺程度の大きさのカードを手渡す。

「ワルプルギスズ・ナイト?」

名刺と言うには酷く硬質でまるで会員証か何かの様なカードで、男は表面を読んで、微笑んだまま小首を傾げるクレアの顔を胡乱げに睨み付ける。

「そのカードをご覧頂ければ……アナタ方の主は、きっと僕に会ってくださる筈です」

そう言って細めた目をクレアは薄く開くが、その長い睫の合間、深すぎて黒に近く見える宵闇の様な紫の瞳が妖しく輝くのを見て、リーダー格の男はただならぬ空気を感じた様子で、少し待てと告げ二人に背を向けてギルド回線ででもマスターと話を付け始めた様だ。
その姿を見守りながらクレアは危機感を感じなくてはと思うものの、やはり自分が現在住まう世界とは違う純粋な暴力という力で支配されているだろう世界の空気を感じ高揚している己の不埒さを思い知る。

「……本分を忘れないでください、クレア……」

笑みを含みながらも冷たく窘めるようなアデルの声を聞いて、ハッと我に返る。苦笑混じりの笑みを返しながら返す。

「その様に肝に銘じます。キミも最初の話通り動いてくださいネ。行きすぎては全てが無駄になりますから……」

敷地外に下がるように片手でアデルの胸を押し、目にかかる前髪を掻き上げながら、微かに紅潮した顔で微笑みながら熱を吐き出す様に溜め息をついて踵を返し、来るようにと顎で示す男の後を追って、土壁の二階建ての母屋と思しき建物に向かっていく。
それを視線で追いながら、アデルは面白く無さそうに目を細めて、ペコペコから降りると座らせ、その体に寄り添うようにして体を休めるべく目を閉じた。

「僕ならば、御前をこんな目に遭わせずに済んだのに……」

懐から取り出した何かのカプセルを頬張り、水筒の水で流し込んで、見張りの男がこんな砂漠で寝るつもりなのかと驚いていたが全く気にせず目を閉じたままじっと動かなくなった。

<<to be continued>>

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