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おとうさんすいっち。

登場人物紹介

かんばんむすこきょうだい
身持ちの悪い母葱を早くに亡くし、孤児院の世話になるがその孤児院がアコ&剣士専門の売春斡旋をしており目をつけられて苦労したという不幸萌えの産物兄弟。

弟・紅玉 ハイプリースト・18歳・172cm
ちょっとえっちな廃プリさん。甘えたがりだが気を許した相手にはツンに振る舞うが、エロスイッチ入るとアヘる。(今回はアヘらないよ!)

兄・柘榴 アサシンクロス・20歳・168cm
ストイックで生真面目な性格だが、弟に負けず劣らずのエロ体質。過去の経験からエロ体質なのに性的な事に嫌悪感がある。

兄の恋人・レンツォ プリースト・46歳・179cm
身重の妻を自分のミスで亡くして、ショックでEDを患ったおいさんプリースト。紆余曲折柘榴さんと現在お付き合い中。
ホントはその出会いの話を先に書く予定だったが…プリアサで…これ上げちゃった以上、自分自身をごまかせないのでそのうち完成したらうpします。

注・エロシーンなし。でも、それなりに性的な話あり。誰得?俺得。

それでは本編。

 

 

「兄さん、今日は帰りが遅くなるって言ってたよ。レンツォさん、聞いてなかった?」

家に迎え入れてくれた恋人の弟・紅玉に不思議そうな顔をされて、レンツォは少々気恥ずかしさに苛まれた。

「あ、あぁ……尋ねそびれていたよ。急に済まないね、紅玉君」

何故、不思議な顔をされたかと言えば、恋人である兄・柘榴は律儀な性格で尋ねてくるとすれば前もって予定を知らせる筈で、こうしてレンツォが尋ねてくるのにその予定を教え忘れたなど兄にしては珍しいと思ったからだろう。尤も来訪予定が無かっただけに教え忘れたのではなく、レンツォがふらっと逢いたくなって尋ねた所為でそれを第三者に気付かれてしまうのが少し恥ずかしかった。

「……あー、あぁ……さぷらーいず……というヤツですかー……んふふー」

はぐらかそうかと思ったが、嘘を吐いても何もならない気がしたので当たり障りのない返答を返したつもりだったが、この手の事に察しのいい紅玉はレンツォの表情から気紛れ訪問だと気付いてしまった様で悪戯っぽい笑みで彼の顔を覗き込んでから先を歩み、リビングまで案内するとソファを示した。

「お茶……コーヒーでイイ……ンですね? 兄さん帰ってくるまで寛いでてー」

「あぁ、ありがとう。でも、約束も無く来た邪魔者だから、客扱いしないでいいからね」

目当ての相手の居ない他人の家は居心地の悪い物だなと内心思いつつも、勧められて断る理由もないので待たせて貰うことにした。
気がかりと言えば、この恋人の弟は悪戯ッコでそれもなかなかえげつないセクハラをしてくる所と、それを心配して恋人の柘榴の機嫌が悪くなることだが、そうそう深刻な問題になる事じゃ無い。それに怒らせてしまうのは不本意であるが、恥ずかしがって滅多に素直に感情を表さない柘榴が嫉妬めいた感情を表に出すのは珍しく、柘榴本人には申し訳ないがレンツォにとって気恥ずかしいが少し嬉しい気持ちもあった。
内心色々と巡らせるが、結局の所、逢いたいと思って来たのだから、ちゃんと一目でも柘榴と顔を合わせて帰りたいと思っていた。結果としてやきもきさせてしまうかも知れないが……。

「はい、コーヒーだよ。と言っても、インスタントだけど……うん」

びっくりするくらい不器用な紅玉と知っているから、レンツォは淹れ立ての珈琲など期待していなかった。しかし、それでもちょっと失敗して溢したらしくカップの周りがインスタントコーヒーの粉で汚れ気味ではあるが目の前のローテーブルにカップととともに砂糖とミルクを置かれる。そこでちょっと疑問が過ぎるが、折角持ってきて貰ったので例を言おうと顔を向けるとすぐ横に腰を下ろす紅玉の姿が目に入った。

「ありがとう……っと、オマエさんも飲むのかい?」

言った後にお邪魔しているのは自分なのに失礼な言い草かと、ふと過ぎったが紅玉は気にした様子もなく、妙にかしこまった様子で横にちょこんと腰を下ろしてレンツォの顔をじっと見つめていた。
悪戯な彼の性格をまざまざと思い出し、柘榴を待つ間に何か不穏な事があったら困るなぁと考えつつ、こちらも少々神妙な面持ちで見返す。

「うー……んと、あの……そのぉ……お話が、あります」

紅玉が赤面すると、こちらも釣られて危うく赤面し出してしまいそうになる。血が繋がっているが諸事情で紅玉は西洋的、柘榴は東洋的な容姿でどちらも美しいが目の色と目元の辺りを除いて兄弟と看破するのが難しいくらい似ていなかった。だが、男同士とはいえ、恥じらいながら話す姿には両者ともにぐらりと来る物がある。かといって、自分と彼が間違いを起こす確率は恋人の兄弟だからと言う罪悪感を除いても限りなくゼロに近かった。

「な、何だい? 急にかしこまって……そんな風に言われてしまうと、緊張してしまうのだけどな……」

ストレートに色事云々と言い出すのは自分の方が意識しすぎている感じになってしまうので、直接的な表現は避けて冗談めかして緊張気味の紅玉に対して揶揄する様に言った。
ほんのり赤い程度だった頬が一気に紅潮する。図星だったろうかと思いかけた頃に紅玉は目を閉じて必死に恥ずかしそうな様子で前置きがあっても唐突な事を言い出す。

「あ……あの、その……今日って、父の日なんですけど! ……ぁ……ぅ……」

察しの悪い方ではないとレンツォは自負していたが、切羽詰まった様子で今日が父の日だと告げられても今ひとつピンと来ずに、恥ずかしさから紅玉が黙ってしまったがどういう意図か分からずにブラックのままの珈琲を傾けながら頷いた。

「え……ええっと……うんと……その、そのですね……」

言おうと意を決したものの、紅玉は羞恥心を思い出した様でもじもじと体を揺らして俯いてどう切り出そうか考えあぐねている様子だ。
以前、悪戯と兄への気遣い半分半分と言ったところで、柘榴の悦ぶベッドでのテクニックを無理矢理指南しようとした時は、こんな羞恥心の欠片も見せなかったのにと複雑な気持ちにはなったが、何を自分に話したいかは察せ無かったがどうもそういった性質の話ではない様な気がレンツォはしていた。

「落ち着いて……不穏なお願いではなさそうだから、恥ずかしがらずに話してごらん。難しい事じゃ無ければ、聞いてあげるから……ね?」

少し触れるのは不味いだろうかと過ぎったが、恋人となった柘榴も男で、その弟・紅玉は男も惑わす様な色気を持っていると思うが、レンツォは元々は異性愛者であった。そもそも心因性のEDで長らく性的に不能で現在漸く柘榴だけには反応する様になったが、彼以外では勃起できる自信がない。故に怪しいことにはならないと……律儀にも内心言い訳めいたことを考えながらも手を伸ばして紅玉の真っ白で柔らかな髪を撫で言葉を促した。

「う……うぅ……ごめん……なさい……その、えっと……ボクらが、孤児で母さんは居たけど、父さんは居ないのは、兄さんから……聞いてると思います。それで……兄さんは、一応……認めては貰えないだろうけど、父さんが誰なのか……分かってます……」

漸くその言葉で何となくレンツォは紅玉が自分にお願いしたいことを察することが出来た。だが、そこまで来ては最後まで言おうとしていることを静かに聞いてやる方がいい様に思えた。
静かに頷いて、頭に乗せた手をゆるゆる動かして髪を撫でてやる。くすぐったいのかぷるぷると小刻みに震えるが、厭では無い様子なので続けたまま様子をうかがう。

「ボクは……多分、そうじゃないかと思う人が……居たんです……。大きく……大人になって、探してみたンですけど……名前と顔だけで……でも、多分……この世には……もう居ない……かもって事でした……」

声が濁ってくる。この最中、柘榴が帰ってきたら、ぱっと見どう見えるだろうかと少々不安になるが、泣いて気持ちが楽になるなら多少の誤解は仕方ないかと諦めてそっと髪を撫でながらまた静かに頷いて、全て吐き出す様に促す。

「……あの、それで……レンツォさんは、兄さんの恋人……だから、おかしいケド……その……父さんってどんな感じかな……って、その……失礼だけど……呼んでみて……いいです、か?」

年の差を思い出させられて、ちょっとだけほんのちょっとだけ傷ついたが、実際自分の子が生まれてきていたら紅玉と同い年だったと思われるだけに感慨深い様な気持ちになって、泣きそうな紅玉の背を宥める様に叩きながら優しく頷く。

「あぁ、それくらいの事ならお安いご用だ。そうだな……丁度、俺の子が居れば、オマエさんと同じくらいだったしな。気恥ずかしいが、呼んでもいいよ」

最初、柘榴への気持ちに気付いたときも随分と悩んだが、年の差はあれどレンツォが柘榴の救いに、柘榴がレンツォの救いとなった事で、半分死んだ様な惰性で生きていたレンツォを生き返らせてくれたのだ。そのことを思うと、ささやかだが救いになるなら、柘榴と紅玉は複雑な関係で一時お互いを憎み合っていた時もあった様だが、恋人の掛け替えのない兄弟が自分に救いを求めるならプライドなど喜んで捨てて応えてやろうと言う気持ちになった。

「……あぅ……その……あー……ご、ごめんなさい……レンツォさんも……ボクったら……」

父の日の話を聞いて、多分もうこの世には居ない父親のことを想い。大体の歳を計算したところ、レンツォが同じくらいと言うのを知って舞い上がってチャンスがあったらお願いしてみようと思っていた紅玉だったが、失礼なのが年齢だけの話でなかった事に気付き慌てた様子で頭を下げてますます泣きそうな表情でレンツォの顔を見つめていた。

「あ……あぁ、知ってたのか……済まない、大丈夫だ。柘榴さんと付き合う様になってからは、過去だ。過去になっている。俺も……名前をつけてやる事すらなかったんだ……父親の気分って味わってみたい、気にしないで呼んでみてくれ」

もっと気安く呼べる様に明るく振る舞ってやろうと思ったのに、妙にしんみりとしてしまう状況になってしまっていた。
その行動が正しいかと言うと自信はなかったのだが、父親ならこうするだろうと考えて紅玉の体を引き寄せるとギュッと抱きしめてやった。

「……え……あ、あの……その……いいですか? ……」

まさか抱きしめられるとは思っていなかったようで、腕の中で泣きそうだったのも忘れてきょとんとした表情戸惑った様だが、慰めに抱きしめてくれた事に気付くと更に赤くなり今度は嬉しさからかはにかみながらも目許に涙を溜めて小刻みに震える。

「あぁ、いいよ……改めて確認されると恥ずかしいから、もう聞かないで好きなだけ呼んでいい。そもそも、プリーストなのにハイプリーストのオマエさんにお父さんなんて言われる気持ちも考えてくれ……」

冗談を挟みつつ、笑みを含んだ声で答え、泣かせない様にぽふぽふと背中を叩いてあやしながら微笑みかけてやる。
冗談で言われて漸く気付いた様で年齢は親子ほどだが、纏う法衣は全く逆転している。少し我ながらの情けなさをレンツォは感じていたが、口にするほどの事では無い。紅玉も驕る様な所が無かったために殆ど意識していなかった様だ。

「あ……あぅ……気を遣わせてばかりで……ごめんなさい……ボクがお願いするンだから……ボクがもっと、考えなきゃ……いけない、のに……」

冗談のつもりがまた墓穴を掘ってしまった様だ。レンツォは普段の余計な気を回してはセクハラな悪戯ばっかりして兄から怒られるいたずらっ子のイメージとはまるで違って調子狂うなと苦笑を浮かべ、気持ちを落ち着かせるため頭を撫でながら引き寄せてまた抱きしめる。

「オヤジさんと思ってくれて構わないって言っただろ? 職位としちゃぁ、オマエさんに負けてるんだから、気遣いくらいは年長者としての面目を保たせてくれ」

「ええ……レン……えっと……その……はい、とう……さん……」

わしわしと髪を乱す様にレンツォが頭を豪快に撫でると、小刻みに震えながら消え入りそうな声で紅玉は答えた。
たった一つの単語なのだが、お互い生涯そう呼ぶことも呼ばれることも多分無いだろう言葉が胸に沁みる。関係性はあるが他人同士である恥ずかしさが一番大きいのだが、その言葉の持つ意味がじんわりと胸に響き暖かい様なそんな気持ちにさせる。

「うん……えーっと、あの……それで、よろしい。 ……紅玉……?」

恋人の弟で随分親しくなったが、呼び捨てにするのは初めてだった。呼んでもいいか迷ったが、父親であるのなら息子に君づけにするのは他人行儀かと呼び捨てにしてみたが、気恥ずかしさから中途半端になる。
だが、それでも嬉しかった様で紅玉は屈託の無い笑みを浮かべ頷いて、今度は勇気を持ってはっきりと呼んでみる。

「えっと……なぁに……父さん……」

歳不相応なくらいはしゃいだ様子でギュッと体に抱きつき、胸に顔を埋めて自分の名を呼んだのに応える。
でも、レンツォも特に考えもなしにこういう場合は名前を呼ぶのだろうかと勢いで呼んでしまっただけに何かと聞かれて返答に困る。何でも無いと言うのも失礼かと思って尤もらしい言葉を返そうと暫く悩んだが、無いものは思いつかず申し訳なさそうな苦笑で返す。

「……うん、何でも無い。ただ、呼んだだけだ」

ふわりとした癖ッ毛を撫でて、間近すぎてドキドキするがあくまでもこれは慈善活動の様な物だと律儀すぎる故か言い聞かせる様に何度も自分の中で繰り返しつつ苦笑になってしまうが優しい笑みで胸に顔を埋める紅玉の頭を見つめる。

「……あはは……変なの…。変な、父さん……ふふ」

視線に気付いてか顔を上げて、無邪気で愛らしい表情でくすくすと紅玉は笑う。
大聖堂で仕事中の彼を見かけた事があったが、家で見る悪戯っ子な彼とはまた違った真面目でお堅そうに見える印象だった。今の彼は仕事中も家で見る普段の彼とも違う様に見える。多分、幼い頃に父が無く、更には母親の愛もろくに受けることなく、兄の柘榴にも遠慮や気遣いもあって甘えられなかった故の垣間見える幼さなのだろうかと感じた。
自分の生まれてくる事も叶わず、名付けてやることの出来なかった子を想い。代わりと言っては自分の子供にも紅玉にも失礼かも知れないが、その想いを埋める様に無言で見つめたまま、何度も何度も優しく髪を撫で寝かしつける様に背中を何度も優しく叩いた。

「父さん……の、匂い……」

嬉しいのだろう微笑んでいるが、レンツォが感じる郷愁の様な切なさを紅玉も感じているんだろう再び震えながら目尻に涙を浮かばせて、ギュッと法衣の襟を掴んで引き寄せる様に抱きつく。
少しだけ場違いながら、父親の匂いみたいな加齢臭めいた物がするのだろうかと過ぎったが、下らない事を考えるな!と自分を戒めつつ、何も言わずにただ慰める様に優しく背中をさすり続けた。
赤の他人とお父さんごっこかと恥ずかしさからか、醒めた風に考えてしまう部分もあるが、不思議と悪い気はしない。柘榴が彼の親代わりとなってきていたのだから、女装が似合いすぎるのを気にしているのは知っているが柘榴が母親で自分が父親で紅玉が息子だとすれば叶わなかった過去の傷が埋まる様な気がして嬉しい様な寂しい様な気持ちに見舞われる。
暫し、自分も目を閉じてお父さんごっこにどっぷり浸かってみる。どれだけ時間が経ったろうか、ふと気配がした様な気がして扉の方に視線を向けて、ギョッとした。

「……レンツォさん……それに……紅玉……何してるんだ?」

雰囲気的に入りづらかったのか、片眼だけで部屋の中を覗き込みつつ控えめな声で尋ねてくる。少し殺気の様な物を感じるが、ストレートにぶつけていい物か迷っている気配がする。
正直な所、殺気が無くても格好的な事もあって少し怖いかった。片眼だけ見えるといっても、彼がいつも狩りの時に愛用している女神の仮面を外さぬまま……つまり、構図的に言うと黒髪の掛かった女神の仮面の右半面と頭の上に装備したひよこちゃんが見えると言うシュールすぎて怖い状態になっていた。

装備

「……ふにゃっ……にい……さーん……んぅ……」

抱きしめられるぬくもりと安堵に微睡みかけていた紅玉にも声が届いた様で眠い目を擦りながら体を起こす。
体重の移動を感じながら、しんみりムードが伝わっていなければ非常に不味い状態で抱きつき抱きしめていた事をレンツォは思い出した。

「お帰り、柘榴さん。あの、いかがわしいことをしていた訳じゃ無い……と、言い訳すると余計怪しいか……」

本当にいかがわしい事など何一つ無いから、当たり前の言い訳をするのだが、レンツォが紅玉を引き寄せる形で抱きしめる形になっており、怪しくないと言うと際だって怪しく思えてくる状態だなと改めて気付く。
うっかりで怒らせてしまったと反省するものの、現場を見られると怒られるからと言って秘密にしておくのも、良くないことの様に思えた。開き直りかと思われてしまうかも知れないが、真面目にちゃんと事情を説明して分かって貰う他無いと考えて柘榴を手招きする。

「おいで柘榴さん。何で紅玉君を抱きしめていたか説明するから……」

素直に自分の許まで来てくれる自信が無かったが、何も疚しい事はしていないのだと言い聞かせて紅玉とは反対側のソファを示す。
まだあまり頭がはっきりしない様だが、言うまでに随分迷っていたのを思い出して紅玉に事情説明をする事を律儀に詫びる。

「あの、恥ずかしいかもしれないが……先程の件、柘榴さんの誤解を解くために言わせて貰うよ?」

もう一度目を擦ってから、反応が鈍っているらしくぼんやりとレンツォの顔を見つめた後に、言ったときの恥ずかしさを思い出した様で耳まで赤くしながらも素直に頷いた。

「あ……ぅ……うん、兄さんにレンツォさん借りちゃったのだもの……恥ずかしいケド……イイヨ……」

浮気疑惑を深めそうな言い方に少々頭痛がしたが、悪気はないし、どこをどう勘ぐったところで何一つ怪しいところは無いのだと、変に焦ったりして疑われない様に落ち着いて話し始める。

「その、オマエさん達が孤児だった事やら、オフクロさんの身持ちが悪くて……オヤジさんが二人とも違ったり、そのオヤジさんとの仲が殆ど無いってのは柘榴さん、オマエさん話してくれたよな。で、今回、紅玉君がオヤジさんてのはどういう物かと……その、オヤジさんの代わりをしてみてくれって頼まれたんだ」

改めて言ってみて、この兄弟との親子ほどの年の差を思い出したり、部屋の中には入ってきたが狩り装備のままで女神の仮面にギャングスカーフでひよこちゃんを頭に乗せている恋人・柘榴の姿がシュールで切なくなってきたが言い切ると、再び柘榴を自分の許まで来る様に手招きした。

「途中で帰ってきたら、怪しまれるのは予想できたが、オマエさんの大切な弟のお願いだし、俺も……その……子供が居たら、どんなだろうかとか考えてしまってな……でも、すまん。以前、二人でちょっとやらかしたのに疑われる様な事をして……本当にすまない」

以前、レンツォは紅玉に上手いこと乗せられて、浮気未遂をしてしまった事があった。未遂で済んだのはEDを患っていた所為だが、逆に乗せられてしまったのも性的に不能であくまでも練習だと、色々教える内に催してしまった紅玉の自慰の手伝いをさせられている様な状況に気付かなかった所為もあるのだが……。
兎も角、不本意ながらも浮気を勘ぐられる様な前例があるだけに、やっと触れられる距離まで寄ってきた柘榴の片手を両手で握りながら頭を下げた。

「…………う……あぁ……そう、なのか……その、勘ぐってすまない……でも……その……あの…………」

理由を知れば、流石に怒る気にはならないと言うより、怒れない状況だと気付いた様だが、怒りかけていた様子で気持ちの収まりがつかないのか妙に歯切れの悪い返答が返ってくる。

「いや、オマエさんの気持ちを考えるなら、先に話してからした方が良かったと思う」

握ったままの柘榴の手を引っ張って横に座らせようとする。が、抵抗して座ろうとしない。年上で体格的にはレンツォの方が上だが、戦闘向きに鍛え上げられている柘榴の方が力が上で、無理強いはしたくなくて途中で諦めた。それでも手を離したくなくて片手は握ったままだった。

「……あぅ……兄さん……ごめんなさい……ボク、お邪魔だよね……」

二人の声を聞く内に多少は目が覚めたのか、少し足下が覚束ないが立ち上がるとワープポータルを出してそれに乗る。行き先は告げられずにも分かったが、急に二人っきりにされて恥ずかしさがぶり返してきた。

「ええっと……ああ、その……俺もデリカシーが無かったかもな。その、心配しなくても紅玉君とは、もう間違いを起こさないから安心してくれ。恥ずかしいが……お父さんごっこというかをしていただけだ」

立ち上がると、再び手を自分の方へ引くと頭一つ以上違う背丈の柘榴を両腕で包み込む。何となく口下手な上に恥ずかしがり屋だから、柘榴は上手く自分の気持ちを言い表せないで蟠っているのだろうと気付いて、自分の気持ちを言いやすい様に助け船を出してやる。

「……別にいい……分かったから……。アイツも余計な事ばっかりするが……オフクロにも相手されなかったし……オヤジもはっきり分からなかったからな……甘えたくなるのも……普通だろ……」

口では分かった風に言うが、未だに顔を隠す様な装備を外さないし、どことなく声音が固かった。多分、頭では分かっているが、言うに言えない嫉妬心やら色々混じり合った物に囚われて居るが上手く表現できないのだろう。

「むぅ、安請け合いだったな……申し訳ない。オマエさんに急に逢いたくなって逢いに行ったら喜んで貰えるだろうかと来たはずなのに、複雑な気持ちにさせてしまって……」

顔を見られるのが厭らしく未だに頭装備を外さない。仕方なしに頭を撫でる邪魔になるのでひよこちゃんを外してソファの上に置く。柔らかな癖毛の紅玉とは違って、梳くとさらさらと零れ落ちるような黒髪を何度も優しく撫でる。
呆気にとられたのか、柘榴はレンツォの顔を見上げて固まったが、遅れて状況を把握すると腕を掴んで止めようとした。

「……子供扱いか? 」

不愉快そうだが、多少戸惑いのあるような声。
柘榴は感情を表に出すのがもの凄く苦手だった。基本的に感情が大きく表情に出る事がないし、正直に気持ちを告げようとしても羞恥心が強く言葉に迷い過ぎて吐き出すのに随分時間が掛かる。
今は頭に血が上ったが、怒るに怒れない理由でどう気持ちを収めるべきか困惑しているように受け取れた。ただ宥めるのに髪を撫でたが、レンツォも時々気にするが柘榴もやはり年の差を気にしているのだろう。弟と同じく子供扱いされた事が気に触ったようだ。

「そういう訳じゃない。急に来たりしたから、オマエさんを困らせちまったんだろうなぁ……本当にすまない」

一度抱き寄せてから、仮面に手を掛ける。逃げようと後退りしようと咄嗟にしてしまったようだが逃げる事は無く、先程から仮面の隙間から見えていた紅い瞳と仮面に隠すには惜しいきつい釣り目にすらりと通る鼻梁が垣間見えた。
動揺に揺れる瞳に自分の視線を絡めると、無理には引き下ろしたくなくスカーフ越しに口付ける。

「柘榴さん……」

いつも最初の口付けは緊張か怯えか体を強張らせる。
彼を愛でるには、その恐怖心に近い感情を解し宥める所から始めなければならないと常に感じていた。でも、面倒と思うより、その癖すらも愛おしいとレンツォは思っていた。

「…………何だ……誤魔化すな……」

言葉より行動で示す方が良いかと、愛情を行動で示したが、体の良い誤魔化しに思えたようで憤りを滲ませた固い声が返ってくる。
レンツォは失敗したようにも思えたが、こういうときは言葉を重ねても不満が残るだろうと考えて、そのまま強く抱きしめた。

「そうだな、その苛立ちは、俺に対する独占欲を感じてるんだろうか……」

「…………な、何を言ってるんだ?」

感情を逆撫でする言葉にしか思えないが、独り言のように柘榴の気持ちを確かめるように呟く。勿論、返った言葉は更に不満が滲み、体は強張る。憤りを越えて本当に怒るかも知れなかったが、それでも続ける。

「俺はオマエさんの物だ。独占欲を感じて貰って嬉しいんだ。我慢することは無い……納得しないかも知れないが、今の蟠りはきっと独占欲だ」

視線が鋭く刺さる。それに今の台詞もデリカシーがないし、自惚れている様に思えたが自分の感情を制御することが当たり前で自分の本心を自分で分からなくなってしまう柘榴だから敢えて荒療治の様な行動を取っていた。

「……何…………っ…………」

流石に怒っているのかも知れない。でも、上手く言葉が出てこない様だ。
突き放したり力尽くでレンツォを引き剥がす事を攻城戦の経験もあるという柘榴なら造作も無い事だろう。それでも無理に離れようとしない彼の様子を見てレンツォは髪に口付け、そっと告げる。

「歳の差を気にしてるなら俺も一緒だ。でも、好きなんだ……過去の事を思い出しちゃあ、オマエさんを傷つけちまってるかも知れないが、今幸せなのを想うのに過去がなけりゃ今がないんだ……」

自分に都合の良いことばかり言っているとレンツォは思ったが、自分の感情を上手く表現できない柘榴だが、逆に相手の気持ちは察しようとする。だから、下手に嘘をついてもしょうが無いと思うから、偽りの無い気持ちを告げようと一生懸命正直な気持ちを告げる。

「今、オマエさんと居ることが幸せだ。俺はお人好しだから、繊細なオマエさんを傷つけてしまうかも知れないが、一番大切なのは柘榴……オマエさんだけだ……」

顎にそっと手を掛けて顔を上げさせると、柘榴は驚いたように目を見開くが、どう反応して良いか迷うように視線を彷徨わせ、絞り出すようなか細い声をあげる。

「……何、ズルいコト……言ってるんだ……貴様は……」

目が細められる。口唇が歪むのを押さえ込むように引き結ばれるが、それを隠していたギャングスカーフを解いて外し、レンツォは口唇を重ねた。

「歳を重ねているからなぁ……」

性的な口付けでなく、じっと体を強張らせる柘榴に何度も角度を変え軽く重ねるキスを送り、愛おしげに感極まって泣きそうな柘榴の顔を愛おしげに優しい目で見つめる。

「……………バカ…………」

もう一度、自分よりも随分身長は低く線も細いが、アサシンクロスらしい無駄の無い筋肉のついた体を確かめるように抱きしめる。
そして、少し恥ずかしげにはにかんだ笑みを向けて、咳払いをする。何事かと柘榴が顔を上げたときにじっと顔を見つめてレンツォは言った。

「……申し訳ないが……その、オマエさんのコトを子供扱いしていないと言うか……を、証明する……ような……」

どことなく気まずい雰囲気を漂わせる様子で言うが、柘榴にはピンと来ない様子で緩み掛けた表情を怪訝そうに歪めてレンツォの顔を凝視する。
すると、更に狼狽してレンツォはえっとだの、あのだの、ぶつぶつ言いつつ視線を反らして迷ったが、視線を合わせると酷く照れた様子で告げた。

「……クサイ台詞だが……オマエさんが……欲しい……」

何も言えずに柘榴は硬直し、言ったレンツォも羞恥からか顔を覆い隠すように手を翳し、しきりにすまん、申し訳ないと小さな声で繰り返した。
表情は硬いままだが暫くして柘榴は漸く搾り出す様な小さな声で答えた。

「……し、仕方ない……アンタが望むなら……」

自分の言った台詞が恥ずかしかったが、真顔で漸くそんな台詞をやっとといった感じに言う柘榴が可愛くて吹き出した。ちょっとムッとした様子だが、精一杯の返事と考えると笑ってしまった事は失礼に思えて、改めて微笑むとそっと髪を撫でた。

END

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