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パラにゃんさんと廃プリさんのクリスマス【前編】

初めて読む方向けの説明。

主人公・紅玉は、孤児であったが為にある組織で男娼をさせられていた身であったが、恋人や周りの環境に恵まれて真っ当な聖職者として歩み始めたハイプリーストである。
今回のシリーズは、その紅玉が恋人のパラディン・ディートハルトとクリスマスにデートの約束をした物の風邪を引いてしまい以前からの知り合いの怪しげなマッドアルケミストに回復の妙薬を頼んだばっかりに起きる騒動でございます。

無理な設定が続く話に出てくる上に、その設定をするための飛び道具的なとんでも設定が重ねて出てきますので、ゆるーく許せるか、読んでみて気に入らなくてもスルーできるスキルをお持ちの方のみお読みください。(※注意書きを読んだ物として、特殊設定についてののご意見等はご辞退申し上げます)

 

 

 

登場人物紹介。

紅玉(コウギョク)
本編の主人公、悪徳孤児院の出身で元組織の男娼をしていたが、現在はド淫乱でドMなだけ(?)のハイプリーストさん。
外見 癖ッ毛の白マジデフォ・名前の通りの赤目

ディートハルト
本編主人公・紅玉の恋人。男娼である過去を知りながらも受け入れた。ド淫乱故に流されたり、以前からのつきあいで断れずに他人とセックスしても平気というより、正直にその内容を話す約束しており、その点はかなり変態。
外見 青髪ボサ毛のパラディン・グリーンアイに天然ネコミミと尻尾。

ベランジェ(通称・センセイ)
紅玉ととんでも無く変な出会いを果たし、彼の上司となった風変わりなハイプリースト。医師としての資格を持ち、大聖堂の保険医として勤務。
外見 メカクレハイプリースト・眼鏡

ヴァレーリオ
紅玉が男娼として所属していた組織と取引のあったマッドアルケミスト。
天才らしいが、興味本位と自分の研究・身の安全の為にしか頭が働かない為に非常に胡散臭い。魔法のように望みを叶えてくれるが、その代わり対価としてのリスクが悪魔並みに酷い。

 

 

「……ふぇ……ふぁ……ふぁっ……っくしっ!」

鼻がムズムズしたと思ったら、堪えきれずにくしゃみが出てしまった。咄嗟にハンカチで口元を押さえながら、飛沫が飛ばぬように斜め下を向いた。

「おやまぁ……昨日は野外プレイでしたか? お大事に……」

ハンカチを仕舞おうとした所でベランジェの不躾な言葉に紅玉はキッと険しい表情で顔を上げた。そして、自分が書類の整理をしていたテーブルの前を通り過ぎる彼に怒った様子で声を荒げる。

「ちょっと! 何ですか、ソレ! フツー大丈夫?……とか言いません? 失礼ですよっ!」

いつもの調子の発言ではあるのだが、質の悪いことに都度怒らないとどんどん調子に乗って酷い発言をしてくるのが常で、怒っても仕方ない様な気がしながらも、結局怒らない訳にはいかずに反論する。
だが、スイッと真面目に仕事をしている前を通り抜けて、紅茶を淹れるべく茶器を弄りながら涼しい顔でしれっと言ってのける。

「お大事にとは言ったじゃありませんか……」

更に目を見開き、紅玉は目に力を込めて睨み付けたが、ベランジェは睨まれている事など意識した様子もなく、カップに沸かしたお湯を注ぐ。

「この寒いのに、野外プレイなんて野蛮なことしませんって言ってるんです! 昨日は、巡回をお願いされて運悪く風邪引いたっぽいだけですよ! あ、お茶淹れるならボクもください」

不意に紅玉の分も一緒に注ぐように言われたのには、流石にベランジェも驚いた様子で一瞬目を見開くが、微笑みながら細めてティーメジャーでティーポットにダージリンの茶葉を掬って三掬い入れる。

「そうでしたか、つい君のことだから、お盛んで羽目を外したとばかり……私としたことが下衆な事を申しましたね」

その下衆とか、下品な事を言わなければ、聖職者然として、更には色男な完璧な優雅な微笑みで詫びて、沸き立てのポットからティーポットに慣れた手つきで空気を入れる様に高い位置へポットを引き上げつつお湯を注いだ。

「ああああああああ! もう、どうしてセンセイは、そんな嫌味なほど爽やかに酷いこと言うんですか! ビョーキなんだから心配してくださいよ! 素直に!」

頬を膨らませて拗ねた表情を浮かべつつも、ちゃんと自分の分もお茶を淹れてくれる様子に広げた書類をティーブレイクの為にどこまてやったか確認しながら片付けていく。

「そもそも、医務室担当としては不養生だと示しがつかずに困るんですよ……」

砂時計をひっくり返して、ポットにウォーマーを被せた後、背を向けたままやれやれとこれ見よがしに肩を竦めて首を左右に振るが、勿論黙っている訳にもいかずに紅玉はまたしても声を荒げる。

「ボクはそもそも事務処理の手伝いをさせられてるだけで、ここの仕事が本職な訳じゃありません!」

砂時計に目配せしてから、振り返りこれまた強調している気配がありありとわかるような様子で寂しげに笑って、紅玉の座るテーブルまで戻ってくるとその上に手を置いて身を乗り出す。

「ええ、本当に有能でいつも助かっておりますよ。美味しい紅茶を差し上げますので落ち着いてください。月詠君」

第三者がこのシーンから見れば、紅玉の方が大人げなく感情的に怒っているのではないかと思えるような落ち着き払い宥めてあげているような様子で返す。
勿論、そんな態度に益々頭に血が上るが、戯れで言っているのがありありと解る態度で完全にベランジェのペースになってしまって、これ以上声を荒げて反論するのは良いとは思えず、一度は退いてみるかとムッとしつつも仕方なく紅玉は押し黙った。

「…………………………」

「…………反応してくれないんですかー?」

砂時計の砂が落ちるまでの間、暇つぶしに紅玉のことをからかおうとしていたようだ。不意に黙られて、つまらなそうにベランジェは彼の顔を覗き込んで小首を傾げる。

「……………………」

機嫌が悪いのだ。顔を合わせたく無くって、覗き込んだのとは反対の方向を見る紅玉にわざわざそちらの方向から覗き込むのを繰り返す。
そんなことをしている内にすぐ紅茶の蒸らし時間が過ぎて、渋々紅玉をからかうのを中断してポットの方へ戻り、カバーを外し、カップのお湯を捨てるとティーストレーナーで漉して二杯の紅茶を用意する。
一応、上げないなどという悪戯はしないようで、素直にカップを差し出して、更にシュガーポットも添える。

「今日は……と、言いますか、最近連れないですねぇ……」

誰の所為でこんなに不機嫌なのだと、責めるように紅玉は流石に睨んだが、差し出された腕は確かな紅色の香り立つ紅茶は拒めずに素直に礼を口にする。

「……ありがとうございます……」

角砂糖を二粒ほどカップに入れて混ぜ、軽く薫りを楽しむとすぐに一口頂く。
性格は難ありだが、紅茶を淹れるのは本当に上手いなとしみじみ考えながら、ティーブレイクを楽しむ。ゆっくりしても良いと思うが、やけどしない程度にハイペースで紅玉は紅茶を飲んでいく。
それに気付いて少しベランジェは不思議そうにしていたが、自分も己の淹れた紅茶を楽しむのにそんなに深くは気を止めていなかった。
行儀悪いが、最後の一口を傾けて飲み干す……と、同時に紅玉は立ち上がった。

「アレ? どうしたんですか、月詠君? おトイレですか?」

一々不躾なベランジェの言葉に、紅玉はまた視線を鋭くして睨み返すが、今度は清々したとでも言いたそうな様子で胸を張り、カップをベランジェの方へ押し出して言う。

「忘れたんじゃないでしょうね、センセイ……ボク、今日は早上がりだって、ちゃんと申請したはずですよ?」

本人はすっかり忘れていた様だが、きちんとベランジェの承認サイン入りで本日二時間ほど早く仕事を上がる申請をした書類を彼に突きつけて、そのまま踵を返すと出口に向かった。

「えぇー……この書類、今日締め切りなんですよ……」

もう少し手伝えと言いたいのだろう不満げな声を上げるが、紅玉は今度は営業スマイルでにっこりと笑いながら、戸口で振り返る。

「大丈夫です。後は、センセイがしなくてはならない作業しか残ってませんよ?」

人に任せられると思って、サボってる自分が悪いんだ! とばかりに珍しくドSな笑顔を見せて、そのまま部屋を後に扉を閉じた。

「…………あ、ホントだ……うう……私は残業そうです……ね……」

いつもは食えない態度のベランジェだったが、その時ばかりはしょんぼりと肩を落とした。
特に信仰深い訳ではないが、楽しいお祭り騒ぎになるクリスマスを、婚姻を結んだ奥方とと言うわけではないが、仲の良い友と飲み明かそうと思っていた。どうやら、それも少々遅刻しないといけない様だ。

 

 ベランジェに珍しく勝ち誇った笑みを浮かべたものの、紅玉も部屋を出ると、少々心配そうにため息を零した。
昨日の夜から気配はあって、暖かくして早く寝たつもりだったが、風邪の症状でくしゃみだけでなく微熱だが熱もあるような感じがした。体温が高くても辛くなるタイプではなかったが、それでも少しぼんやりする様な気がした。
勿論、早退の手続きをしたのは、恋人であるディートハルトと過ごす為だった。割と行事は面倒がってスルーしてしまうことも多々あったが、ディートの方から誘ってくれたのが嬉しくて楽しみにしていただけに少し憂鬱な気分になった。

「……うー……時間早いし、病院寄って行こうかな?」

悪くなりそうな予感があるし、手遅れかも知れないが、折角準備に取っておいた余暇を今一番有意義に使う方法はそれくらいしかなかった。
しかし、完全に風邪の症状となるのは時間の問題なだけでその行為も今心配である問題を取り除く物ではなく、あくまでも罹ってしまった風邪を軽減する為の措置に過ぎない。

「………………あ、あのヒト……くらいしか……でも……」

通常薬では治せないと言われる風邪を魔法のように治してくれるであろう人物の姿が頭を過ぎるが、何を対価に差し出すのかと思うと少々怖くて気が進まない。
俗に言う彼はマッドサイエンティストの類で体に多大なる害は無いのが売りだから、病気になったり毒を飲まされたりは幸い今まで無いのだが、その副作用に媚薬効果があったり、魔改造ホムンクルスやプラントの実験台にされたりとろくな事がない。
お休みを挟むし、いざとなったら休みを貰えば良いと少々無責任に考えつつ、他に最善の策も思い浮かばずに、自然と彼の邸宅に向かおうとしてwisを入れた。

『あ……あのぅ、ヴァレーリオさん、お久しぶりです。つかぬ事をお伺いしますが……よろしいですか?』

運が悪ければ、通じない事もある彼へのwisだったが、通じた様だ。暫し、間を置いてから、めんどくさそうな声が返る。

『んー……ああ、卿ントコの……ええっと、葡萄は、所属か……あ、ああ、林檎か、林檎……んー? 何? おもしろくなかったら切るぜ?』

何か作業中だったらしく非常に答えは連れない。やはり、何か引き替えに差し出さないとならないという事に嫌でも覚悟が付いた。真っ当なアルケミストなら開発しないだろうアンダーグラウンドな研究をしているだけにお金には困っていないから金銭的な物を求められないのはまだ良い方だが、ちょっと後悔するような実験に付き合わされるのには間違いなく軽くため息が出た。

『ヴァレーリオさんみたいな天才はやっぱり……風邪の特効薬とか、お持ちじゃないですしょーか? 今度、何かの実験のお手伝い志願致しますので、お願いできませんか?』

上司と言うか、昔やっていたいかがわしい組織の幹部との取引があるために何度か相手をした事はあったが、最初に実験的な錬金術で開発された物を試されるのが常であったが、自尊心を擽ると対価はあるが大抵の事ならやってのけてくれるお世辞なしの天才であった。何となく辟易とするが、楽しいイベントの為ならと我慢してなるべく謙りご機嫌を取るように言った。
恋人の為とは言え、そういうことはどうかと通常なら思うだろうが、常識では理解しにくい事にディートハルトは理解がありすぎると言うか、包み隠さず報告すれば許してくれる所か、そういう話を積極的に聞きたがるという妙な性癖があったので、あまり気が進まないが代償に通常なら背信行為と取られかねない事をしても恥ずかしいのを我慢して話せば問題にならないので、なるべく避けたい方法ではあるが、幾分か気は楽であったのだが……。

『…………まぁ、そりゃーできるけどさぁ……えーっと……』

暫く考え込む沈黙があった後に、何やら思い出すのか探すのかの間があった。
ちょっと複雑な気分に駆られていた所為もあって、やっぱり無くても良いかなと思い始めていたのに芳しくないように見え、こういう時は割と脈有りであるのを思い出して更に複雑な気持ちになった。

『あのぉ……やっぱり、無理にとは申しまっ……』

『良し。丁度良い薬がある。最終臨床のみだから、身の安全は保証するし、オマエさんなら副作用も困らないと思うから診てやるよ』

やはり辞めよう!と思った瞬間には、時すでに遅しであった。
別に断ればいいじゃないと思うだろうが、その気にさせるのが気紛れとの合致と根気強さがなければ実現できない分だけ比例するようにやる気になった彼を止めることが非常に難しかしいのだ。

『いやぁ……ヴァレーリオさんのお薬って試薬だからとてもお高いんでしょう? ボクのささやかな風邪の治療にそんな高価で貴重な物はいただけないと思い直しました』

彼、マッドサイエンティストだと思うアルケミスト・ヴァレーリオがなにやら黙った隙に一気にまくし立ててwisを切ってしまおうと思ったが、次に言われたのは通りの名前と番地だった。
研究内容の不謹慎さもさることながら面白いという理由だけで他人の恨みを買うようなことを平気でする人間だ。複数の家を持ち、更には不定期に場所を変えて、その上に現在の居場所をwisで来て欲しい人物にしか教えないのがヴァレーリオ彼の流儀だった。

『ですからー……ご迷惑かと……』

『オマエなら害にならんよーな副作用だし、風邪を立ち所に治す自信はある。来なければ……次の願いは……』

悪魔のような取引をお願いすることは多々あったが、死人でもなければ生き返らせるんじゃないかと思えるくらいいざというときに頼りになる相手だった。もしも次に彼にお願いすることが今回のような他愛のない困りごとでなかったらとか、次もささいな困りごとだったらきっと仕返しされるなと思うと答えは一つしかなかった。

『はい……今すぐ行きます』

失敗したかもしれないとものすごく後悔したが、後悔は先に立たずだ。とぼとぼと最寄りのカプラサービスへ足を向けた。

 

 カプラサービスで指定の街・アルデバランまで飛べば、ハイプリーストなら尚のこと到着は早かった。診察を受けてからでも優に待ち合わせの時間には間に合うだろう。
その診察自体が無事済んで、すんなりと事が運べばであるが……。
通りの番地を確かめつつ、とある一軒家の前に辿り着く。表札はなく、一見すると人が住んでいない様に思えるくらい外観は古びて人気がない。ノックをしてから、wisを使う。

『ヴァレーリオさん、林檎です』

本来の名は紅玉だし、ほぼ引退の身だが源氏名の方が彼には通りが良く、その名で名乗る。

『開いてる。右の扉、本棚。三番目の手順。覚えてるか?』

招かざる客を避けるために最大限配慮した面倒な方法での面会でしかヴァレーリオは会ってくれなかった。どんな身分な人間が好条件の取引を持ちかけても、信用のおける人間からの紹介でなければwisにも応じないと言う話だ。 信頼の置ける取引先ですら、話を聞いて自分の興味のある事柄にしか反応しないのは自分の身近で見てきたから、紅玉にとっては容易に想像できる事だったが……。

「…………間違えないといいけど……」

同じ仕掛けがある家に住むのか、毎回改造しているのだろうかと思いながら、一度失敗して肝を冷やしてから忘れたくても忘れられなくなった。地下室を開ける操作を場所は違えど、順番は同じ操作を一つ一つしていった。
確かに理屈と応用を考えれば、素晴らしい技術を作り上げるが、冒険や軍事など表向きに活用できる技術の開発は面白くないと一笑に付し、取り合わない。そんな性格が災いして実に恨まれやすい人間だった。
ゴゴゴ……と重厚な音がするかと思えば、静かに本棚はスライドする。目の前に現れた胡散臭い地下室への階段を用心しながら踏み出した。
すぐに扉は閉じてしまう。不意打ちに無体な事をされることもあるだけにちょっと心配したが階段は素直に降りさせてくれるようだった。
下まで降りると薄暗いと言うことはなかった。喜ばしいことにも実験用の施設ではなかったようで、がらんとした最小限の設備だけ揃った大きめの部屋の真ん中に大きなデスクとセットの椅子に座る萌葱色の髪をオールバックに固め、眼鏡を掛けた几帳面そうな男が存在していた。

「で、風邪は……重篤ではなさそうだな。症状は自覚症状の初期段階と言ったところか」

目を上げぬまま、呟くように言って、斜め後ろの冷蔵庫の扉を開けて2,3個銀盆に取り上げて、ちょっと彼から遠い位置にあるキャスターで移動式の簡易ストレッチャーを指指して、ようやく紅玉の顔を見た。

「……自分で持ってこいって事ですね」

いつもの調子に風邪ではなく頭が痛くなったが、もう逃げ道はなくて素直に従う。指し示されたストレッチャーを彼の手の届く範囲まで引き摺ってきて止めた。

「下脱げ。すぐ済む」

今度は顎で示すように横着に脱ぐように促されると、渋々だが素直にズボンに手を掛ける。しかし、通常ハッと顔を上げた。

「ちょっと待ってください、ヴァレーリオさん!注射なら別に脱がなくっても!」

「もっと痛い方がお好みなら別の場所にしてやっても良いが?」

思わず肩を揺らして同様に紅い瞳が揺れる。迷った挙げ句にゆっくり左右に首を振りつつ、素直にベルトを外し、恥ずかしくならない様にヴァレーリオに背を向けてズボンを脱ぎ始めた。

「何だ、面白くない……久々に自慢の逸物見せてくれないのか?」

ただでも太い硝子製の注射器にたっぷりと怪しげな薄桃色の液体が吸い込まれていくのを見るのが嫌で、目を背けたのに世に憚る憎まれっ子らしい煽る台詞を言ってくれる。そんな物だから、紅玉は前を見られる前に慌てて自らストレッチャーの上に俯せになり、法衣の裾をめくりあげる。

「……きょ、今日は……そういう用事じゃないじゃないですか……実験にお付き合いするんですから……もう少し、優しく……して、ください……」

ちらりと視線を向ければ、意地悪くほくそ笑んで注射器に入った空気を抜くべく少量薬液を先端から迸らせた。

「生娘みたいな愛らしい事を言ったところで何になるんだ? いつも通りの耳障りの良い悲鳴が聞きたいんだ。それも礼金に含まれるがねぇ……」

その注射針を突き刺そうとしている尻の上をアルコールを染み込ませた脱脂綿で手早く拭き、間髪入れず容赦なく針を突き立てる。

「んひっ……いっ……っぅ……ぅぅっ……んくっ……」

痛みの所為で苦しげな声が漏れ、体もびくびくと震える。押子が沈み込んでいく度に痛みが走るらしく徐々に嗚咽に近い声が混じり始める。
量が多いだけに、すぐは終わらない。ゆっくりゆっくりと馴染む様に一定の早さで注入していく。される方は目に涙を浮かべているが、する側は揺れて微かに藻掻くようにしてしまいながらも、注射されている為に動きを何とか堪えている背を鼻歌交じりに楽しげに見つめていた。

「相変わらず、イイ声だな。久々に勃起しそうだ……おぉっと、これからデートだったな。我慢するよ」

あからさまに下卑た含み笑いをしながら尻臀を撫で上げながらヴァレーリオは言う。痛みがなければ怒る所であったが、今は注射が痛くてそれどころではなく言葉もあまり頭に入ってこない。ぐっと奥歯を噛み締めてふるふると小刻みに震えながら、眦に涙を滲ませて耐える。

「…………声、上げちまった方が、楽じゃねーのか? ……んー、まぁ……堪え忍ぶ声の方が好みっちゃ好みだが……」

わざとだろう一度、薬液を注入する手を止めて焦らすように彼は様子を伺う。多分、ストレートに望みを言うなら、声を上げろと言うことなのだろう。
苦しいが声を上げると体を揺らしてしまいそうで、緩く嫌々と首を振って意地悪しないように懇願する涙目で紅玉はその残酷な様子の彼の顔を見上げる。

「良いねぇ……やっぱり、オマエさん声を上げるのは好きじゃないんだな。そそるが、声を出すのも御代と言えば上げるかねぇ?」

クツクツとのど奥を鳴らしながら、少し強めに押子を押し込む。

「あぐぅ……くぅぅっ……ひあっ……あぅっ……んんっ!」

わざと嬲るようにされては声を抑えることが出来なくなってくる。感じている訳ではないのだが、紅玉の堪える声は妙に色っぽく響く。腰をうねらせそうになるが、針が刺さっているだけあり上身を強ばらせる事で耐え、じっとしながらも小刻みに震えて必死に痛みをやり過ごそうとする。

「イイねぇ……その声、ゾクゾクする……」

舌なめずりしつつ残り少なくなった薬液を焦らすように少しずつ速度を遅くしながら注入していく。
そうすれば、早く終わって欲しい紅玉にとって更に苦痛の時の延長となる。ただ急速な痛みが和らいだ為に肩越しにヴァレーリオを振り見て、少し不安になるくらいの痛みの理由を漸く尋ねる。

「ふぁぁっ……あぅ……な、なんで、この……ちゅーしゃ……いたい……のぉ……」

更にゆっくりになりながら、彼は目を細めて残酷だがそれは嬉しそうに笑い紅玉の問いに答えた。

「そりゃあ、人体カイ……いやぁ、風邪の発端となったウイルスを殺菌して、免疫機構を沈静化する。それに体質改善するンだから、この程度の代償は当たり前だろ? ああ、安心しろ。風邪の症状より遙かに副作用は軽微だ」

何だか聞き直すのが怖いような言い間違いなのか、言い直しなのかをしたがもう信用するほかないような遠回しの本来のこの薬の薬効ははぐらかした答えが返ってくる。
不安が過ぎる……というよりも、痛みで忘れかけていた疑問と不安が舞い戻るが、最後まで押し込み引き抜く痛みに思考を掻き混ぜられて考え事が吹っ飛ぶ。

「あっ……っぁ………ぁ………………………」

より一層大きく口を開き叫ぶが、声にならずに掠れ、吐息だけが喉を鳴らした。針を抜いたら痛みがすぐ治まるかと思ったが、違和感が消えない上に緊張に固くなった筋肉を解すようにヴァレーリオに容赦なく脱脂綿を押しつけながら揉まれて、声のないまま悶絶する羽目になった。
どうやらその様がお気に召したようで、彼は忌々しいほどご機嫌な声で、呵呵と笑いながら言い放つ。

「……ハハハッ、まるでヤられた後みてぇだな?」

耳に届くと反論したくはなるが、そんな気力もすっかり削がれた為に少しでも早く痛みが治まるようにとじっと大人しく耐えた。

 

 薬が浸透するのに痛みを伴うのか、それとも緊張に体を強ばらせすぎたから痛みが残る感じる気がするのか、鈍い痛みを先ほど針を刺された辺りの臀部に感じる。しかし、風邪っぽい症状は元々なかった様に消えてしまった。
喉が腫れそうな感じと関節が鈍く痛むような感じはない。但し、少し熱は残っているような気がした。それは寒気を感じたりすることはなく、不快に思うほどではなく気温が高くて体にまで熱が籠もったように感じる程度の物だった。

「……まぁ、首尾は良しと言ったところか? あ、ぼちぼち時間が立つが、あの大猫とのデートの時間は大丈夫か?」

痛みの所為もあってぼんやりとしていたが、その一言に紅玉は現実に引き戻された様子でのろのろとだがストレッチャーの上で上半身を起こし、余韻を引き摺っている様だが降りたって下着とズボンを身につけ始める。

「時間……気にするなら……もう少し、優しくしてください……」

ちらっと首だけ振り返りヴァレーリオの顔を恨めしげに睨んだが、先ほどの痛みとか散々な目に遭ったことを思い出すと涙ぐんでしまいそうになるので顔を背けて衣服の乱れを正す。

「やんわりしてやっと……もっともっとなーんて言う生臭廃プリはおめーじゃねぇのかよ」

下品にケタケタ笑いながら、つかつかと歩み寄ると態とだろう、先ほど針を刺した辺りを平手でパーンと勢いよくひっぱたく。

「ヒィッ!」

随分、痛みは引いたが名残はあるだけに短い悲鳴を上げて、思わず叩かれた部分を押さえながら振り返り逃げるように後退って距離を置く。

「ふぅ……しっかし、オマエの悲鳴は耳障りがいいなぁ」

わきわきと引っぱたいた手を見つめながら感触を思い出すように指先を動かして、警戒して自分を視界に納めながら出口へと向かっていく紅玉にニィと意地の悪い笑顔を向ける。

「も、もう、気が済みましたよね! い、一応……風邪は良くなったような、気がします。何かお尻が痛いですけど……大丈夫です。な、何か異常があったらご連絡します。ありがとうございました!」

治ったか治らないかはまだ半信半疑と言ったところだが、確かにもう待ち合わせの時間が近い。変にヴァレーリオに絡まれてしまうと不味いだけに手短に礼を言うとそのまま背を向けて階段の一段目を上ろうと踏み出す。

「ああ、報告楽しみにしてる」

何か引き留められるかと身構えていたが、素っ気ない声に思わず紅玉の方から今日はもう見たくないと思っていたヴァレーリオの顔を振り返ってまじまじと見つめてしまった。

「え……えぇ、はい……何かあったら連絡……します」

報告が楽しみな状況というのを考えてますます不安になるが、いきなり体調が悪化とか死ぬ事は多分……きっと、ないと信じているし、彼の薬に自分が苦しめられたケースは大体がセクシャル面の副作用だった。今からデートなのに物凄く不安ではあったが、ちょっと恥ずかしい事がある程度で済むと信じる他なかった。
一応、振り返って見えたヴァレーリオの表情は極悪な笑みではなく、何かに期待したような楽しそうな笑顔だった。まぁ、性格破綻者であるのでそれが吉報と思うのには非常に自信がなかったが、何度も言うが信じる他ない。

「失礼しました」

ひらりと手を振る彼を一瞥して、再び背を向けると紅玉は少し足早に階段を上った。先ほどの本棚まで戻ると、焦るほどじゃないがプロンテラ行きのワープポータルを出して乗った。
単純な媚薬の類いなら殆ど使われてるだろうから違うと思うと不安で、気安く頼るより素直に風邪気味のまま、ディートの所に行って惜しいが早めに切り上げて素直に風邪の静養をすれば良かったと後悔する。
事実、予想の斜め上を行く状況に見舞われるのだが、予想の斜め上過ぎて元々薬効を知っているヴァレーリオ以外誰がこの事態を予想できたであろうか。

 

 

ディートの自宅はアルデバランにある。そして、最終的に今夜向かうのはディートの自宅の方だろう。オマエらは喧しいから二人で出かけてそのまま二人で好きにするがいいと兄の柘榴から言われた。
一人で過ごすのかと言えば、公言はしていなかったが一応恋人であろう筈のレンツォを柘榴が誘ったのか、彼が気を利かせて尋ねて来てくれるのかどちらかだろうといつもの表情のはっきりしない顔にほんの少し嬉しそうな色が見えたので粗方予想している。
それはさておき、最後の予定はアルデバランのディート宅だが、デートはプロンテラの街を歩いてウィンドショッピングやら、クリスマスの雰囲気を楽しんだ後に予約したお店でディナーを食べて、日付が変わった頃にディートの家に戻る予定だった。なので、プロンテラの自宅近くのカプラサービスから一緒に所属しているギルドの溜まり場の方へと向かった。
気温的に言えば寒いくらいなのだが、動く程に汗ばむ様に自分にとっては暑かった。喉の痛みやらくしゃみは止まったもののまだ熱があるような気がする。やっぱり薬は効かなかっただろうかと思うが、体調が悪く感じる訳ではないので何か飲まされた薬の副作用だと思われた。
不安になるが、そのままデートの約束を断って家に帰って大人しく寝るのも折角なのに惜しくて、体調が悪くなったら言おうと思うことにして待ち合わせの街角の広場に到着する。

「ディート、早いね」

ギルドの待ち合わせ場所になっている街灯の下に腰を下ろして、読書に勤しんでいたディートに紅玉は声を掛ける。

「んみゃ……思ったより早かったにゃぁ、コウー」

栞を挟んで本を閉じると寄ってきた紅玉の手を引き寄せて手を伸ばして頭を撫でる。唐突の事に一瞬きょとんとしたが、クリスマスで人での増えた往来の側で傍目に恥ずかしい事をされたのに気づきカァッと紅くなりながら手を引きはがす。

「なっ、ななな、何するの……いきなり……」

少々確信犯な所もあったのか、にやりと笑いつつ荷物の中に本を仕舞いながら紅玉の顔をちらちらと見てディートは返す。
「寝癖っぽかったから直してあげただけだよ。まぁ、コウの髪って癖毛だから変な癖が付いちゃってたのかな?」
何で髪が乱れているのか少し考えた後に、注射してもらってから身嗜みの確認をしていなかったのを思いだして、慌てた様子で手櫛で髪を整え直し、襟や上着、念のため履き直したズボンまでもよく確認する。

「そんなに慌てて、どしたの?」

ふと聞かれて慌てように我に返る。一瞬、先ほどの胡散臭い感じの出来事に狼狽して返答に困るが、正直にストレートに言うと更にからかわれそうなのでヴァレーリオの名前は出さずに出来事だけ話す。

「う……その、お医者さん行った後、身だしなみ整えるの忘れてたから……あ、もう、大丈夫だからね。ただの風邪だし!」

どうして墓穴を掘り始めると穴だらけになってしまうのかと自分の中で葛藤しつつ、取りあえずすぐ横にまず腰掛けて落ち着こうとした。
ディートの方は何故そんなに焦るのだろうと不思議そう且つ楽しそうな様子で横から覗き込むようにして紅玉の顔を見つめていた。

「うん、お兄さんから風邪気味みたいだから、あんまり寒いところは連れ回さないでくれってお願いされたよ。でも、大丈夫? そんなすぐ治る?」

もっともな疑問が返ってきて紅玉は答えに窮して口籠もる。ヴァレーリオの事は間接的に迷惑というか、ディート本人的には役得だったかも知れないが副作用であまり見られたくない恥ずかしい事になって、その原因として面識はないが名前とその名前が意味する事情は何となく察している様だ。
一言名前を出せば通じるが、予想されたくない事まで伝わってしまうので適当な答えが思い浮かばずに黙ったままそのまま固まってしまった。

「何か普通でない事でもしてきたの?」

ヴァレーリオの事はぱっと、幸いなのかどうか思い浮かばなかったようだが、普通に病院に行ったなら困るような事は聞いてないのに答えられずに思わず黙り込んでしまった紅玉に何となく言いづらい方法で風邪を治してきたか、無理に元気な振りをしているんじゃないかと安易に察せた様だ。

「あのその……えっと……あの、風邪じゃ困るから……その、怪しいケミさんのトコ……行ってきたの……だから、多分、大丈夫……と、思う……」

不穏な質問でもされそうな気がしたが、適当に答えて家に帰されてもあんなに痛い注射を我慢した甲斐がない。だから、渋々歯切れ悪くだが答えた。
気まずい様な、気恥ずかしい様な気がしたので俯いて見たが、暫く待ってもディートの言葉が返ってこないので顔を上げて様子を伺えば、何か期待したような先程までの心配そうな雰囲気はどこへやらの悪戯な表情で見返していた。

「何……その顔……」

「あの変なアルケミストさんのトコ行ってきたのー。じゃあ、風邪は大丈夫そうだにゃー」

忘れたか、ピンと来ないと良いなと思っていたが、当人にとっては忘れたい事でも、ディートにとってはとても楽しいことだった様で忘れるはずが無かった。
風邪について心配がないと言う本意が伝わったのは良いのだが、何かディートの喜びそうなハプニングが起きそうな予感に妙にそわそわし出したのが不穏で思わず眉根を寄せて唸った。

「うぅー……もっと、安堵の表情とか浮かべてよ……」

本心を隠そうともしない様子に拗ねたがあまり気にした様子も無く、ディートは紅玉の手を引くと予約を取った店に向かって歩き始める。

「まぁ、大事を取って早く行くにゃー」

誤魔化された様な気がしたと言うか、実際誤魔化されたと思うのだが、ここで喧嘩して帰るには折角の無茶が無駄になる。何か不穏な薬効が出るまでは、一先ず現実逃避だが気を取り直してデートを楽しむ事にする。

「あんまり、大股で歩かないでよ……身長差あるんだし……」

慌てて横に並んで袖で繋いだ手を隠すようにする。周りから見れば、どう見ても男同士にしては仲が良すぎるパラディンとハイプリーストだと雰囲気でバレバレだったが、何だか往来では気恥ずかしい気がして紅玉はなるべくさりげないそぶりをしようとしていた。

「今日は寒いから、食事を先にしてその後、ちょっとだけ夜景見て帰ろうね?」

コクリと小さく頷いて、紅玉は言葉で返さなかったが、頬を赤らめて少し嬉しそうな様子で一瞬だけ身を寄せた。
ディートはギュッと手を掴んで、この溜まり場とは反対側の辺りにあるダイニングバーへ向けて歩き出した。

 

 おしゃれで雰囲気はあるが、顔見知りの店だけに多少冷やかしが入るのと周りの三分の一が同じく同性のカップルと残りが複数の集団が楽しそうにパーティしていた為に喧騒に包まれており、ムードとしては良くなかったがそれでも食事するには楽しくて良かった。
クリスマス用の特別ディナーのセットをデザートまで平らげて一服してから、またしても冷やかしと祝福混じりの複雑な見送りを受けて、当初の予定通り少しだけ夜景を楽しんで行く事となった。
紅玉は少しだけ飲んだシャンペンと暖房の所為か、はたまたやはり熱でも出たのか微妙な雰囲気で少しぼーっとはしていたが、先程の食事は無理なく美味しそうに食べていたので、ディートも風邪については心配が薄らいでいた。

「クレアさんは相変わらず妖しい人だったけど……やっぱり美味しかったね、あのお店」

バーから出て、また溜まり場の方へ中央の噴水を通って向かう道すがら、何となくディートは紅玉に声を掛けた。少し遅い時間になっただけあって、周りの殆どがカップルだし、紅玉がぼーっとしている隙に肩を抱き寄せる。
一定の速度で歩いていたが、ふと動きを阻まれたのにびくっと少しだけ体を震わせてから、一拍遅れて紅玉がディートの方を向いた。

「う? うん……美味しかった……」

ぼんやりしている上に瞳が潤んでいる。やっぱり風邪は治っていないのかなと少しディートは不安になって、これ以上寒くない様に外目を気にせずによりしっかりと抱き寄せて背中から抱くようにして歩き出す。
抵抗されるかと思っていたが、抵抗がなくてディートは益々不安になって溜まり場まで歩くのを辞めて通りを離れて人目につきにくい少し細い路地に入り込んでから尋ねる。

「やっぱり調子悪い?」

抱きしめた体を更に外気から守るようにマントで紅玉の体を包み込む。
すると紅玉は深く溜め息を漏らしてから、少し身動ぎをして、恥ずかしそうだがいつもならなかなか言い出せないのにやけに素直な様子で思いがけない言葉を返した。

「調子が悪いって言うより……その、やっぱり……ケミさんの……クスリの所為、かな……えっと、その……ディート……早く帰って、シタイ……」

腹の上辺りで重ねられた手に自分の手を添えて、火照った体で撓垂れ掛かる。熱で苦しそうにも受け取れる様なくらい呼吸が荒かったが、鼓動の早さと寒さからとは違うぴくぴくと抑えきれないと現れる様な一定間隔ではない震えに甘い声がディートを誘う。

「熱がありそうだけど、本当に大丈夫?」

心配半分、素直に恥ずかしそうだが誘う様子に興奮したの半分、理性で興奮を押し退けつつ、気遣いの言葉を吐くがそう理性は続かない気がした。
腕の中の紅玉が身を返して、抱きつくとあまり人目につかないのを良いことに口唇を重ねてきた。更には、本当に一刻も早く帰りたいくらい切羽詰まっているのを如実に伝える様子で腰をディートの腿に押し付け遠慮がちにだが擦り付ける。

「んっ……ぅんっ……はぁっ……ちゅ……うん、体熱い……ケド、何か、熱と……違うみたい……」

いつもの雰囲気にあてられて発情してしまった時とは少しだけ違う戸惑うような様子で濃厚なキスをくれた後にディートを見上げて、どう表現して良いのか迷った様子で告げる。

「あの……やっぱり、ガマンしなきゃ……ダメ、かな……」

戸惑い頬を赤らめ潤んだ瞳で上目遣いに見つめられれば、体に悪いかも知れないから我慢しろとは言えるはずもないし、こんな発情しきった状態で眠れと言っても紅玉なら間違いなく無理だろうとも思えた。
再び腰に手を回してマントで隠れてしまうくらい深く抱き込んで、旋毛にキスを落として静かに頷く。

「具合悪くなりそうだったら、辞めるけど……うん、介抱してあげようね」

恥ずかしそうに視線を反らしてから目を細めて紅玉も頷き返す。
少しの間も体を離すのが惜しいと言った様子だが、体を離してワープポータルを唱え、ディート宅の側に今日の為にメモを取った場所へと発動する。
よしよしと頭を撫でてから二人で手を繋いで乗った。

<生殺しにて後半に続く>

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